引き続き当院は地域の難病対策にも積極的に取り組んでいます。
品川区難病対策地域協議会への出席等を通じ、より一層貢献できればと考えています。
引き続き当院は地域の難病対策にも積極的に取り組んでいます。
品川区難病対策地域協議会への出席等を通じ、より一層貢献できればと考えています。
散歩と食べ歩きが好きで、休日は運動がてら1時間以上の散歩に出かけます。
最近は謎解きゲームが好きで、先日都内の美術館を巡りながら謎を解くゲームに参加してきました。
謎解きを進めていくと、「次は目黒駅で下車」の指示が。
ん?目黒駅に美術館ってあったかしら?寄生虫館しか知らないなぁ。
と疑問に思いながら目的地へ歩いていくと・・・
いつも診察の移動で通り過ぎる大通りが見えてきました。
緑が多く気持ちよさそうな公園だと思っていた場所が実は「東京都庭園美術館」だと判明!
驚いてGoogleマップを二度見しました。
庭園美術館だったのか・・・!
診療アシスタントとして入職し、車の運転を日常的にするようになってから街を見る景色が変わった気がします。
駅から離れており交通の便は車が良さそうなカフェを発見した時は、どんなお客さんが来るのか気になり、次の休みに行く計画を立てたり。
大通りから一本入った小道に地元の人で賑わうパン屋やカフェを見つけたりすると、新しい世界を発見できたような楽しさがあります。
写真のお菓子はずっと気になっていたチョコレート専門店「CACAOCAT」で購入したチョコレート。
真ん中にフレーバーソースが入っており、美味しかったです。
オールシーズン共通で「動きやすさ重視」のファッションになっていると思います。
トップスは襟付きのポロシャツor医療用スクラブ。下はズボン。
寒暖の差がまだある春・近年は酷暑で暑さと紫外線対策の夏。
この2シーズンのファッション例を一部としてご紹介していきます。
春のファッション例
暖かい日が多くなってきつつも油断するとまだ寒い日もあったりします。
薄めの上着とインナーにヒートテックを着用。
暑い日はヒートテックなし。半袖に上着で同行に出たりします。
私は上着のポケットにアルコール綿やビニール袋などサッと取り出せるものを入れているので、上着はどの季節でも必須アイテムになっています。
夏のファッション例
近年は酷暑!!36.0℃以上の外を歩いたり、階段を上ったり・・・外にいるだけで体力を消耗が激しいです。
私が幼かったころと比べると気温が違いすぎると思います。
サラッと着れるスクラブ、日焼け対策でアームカバー。
帽子をかぶって同行に出ていくスタッフもいました。
写真のスクラブは脇の部分がメッシュになっているので発汗性がとっても良いです!
通勤時、駅からクリニックまでの距離も日傘をさしてます。強い日差しを遮るだけでも歩くのが少し楽になります。
最近は雨傘兼用の日傘、軽量化された日傘、紫外線カットに強化された日傘など沢山の種類を見かけます。
窓を開けて換気するのも大事ですが、外の風が熱風の時もあるので・・・冷房25.0~27.0℃設定で涼む方が体には良いかもしれませんね。
次回は秋・冬のファッション例をご紹介★
追伸:
スクラブという言葉を知らず、先輩に質問した記憶があります。
改めてスクラブとはどんな意味なのか調べてみました。
“半袖で首元がVネックとなっている医療用白衣のことを指す。
主に医療従事者が着用する。「ごしごし洗う」といった意味である「スクラブ」を語源としており、頑丈な素材が使用されているため、強く洗っても生地が傷みにくいことが特徴である。また、従来型の白衣よりもカラーバリエーションが豊富であり、病院内でのチーム分けや患者からの視認性向上のために使用される場面も多い。“ Wikipedia参照。
カラーバリエーションが豊富のようなので、これからは先生方のスクラブファッションにも着目してみようと思います!
※本ブログを執筆した古屋医師は2021年4月~2025年3月まで鳳優会に在籍
荏原ホームケアクリニック リウマチ・膠原病センターの古屋です。 前回「正常呼吸音」についてお話させていただきましたが、今回から副雑音についてお話しようと思います。副雑音1回目は連続性ラ音です。連続性ラ音を理解するためには解剖学的、組織学的な気管支や肺胞の特徴と換気力学の知識が必要です。ここをしっかり理解すると病態の考察が深くなります。今回の目標は「聴診所見から診断名をつけるのではなく、病態を推測する!」です。前回も解剖の確認をしましたが、重要な事なので再度肺・胸郭の解剖を再度確認しましょう。聴診を行う時は、「胸郭の内側・肺の状態をイメージする」ことに加え、換気力学や気道の解剖・組織学の知識が重要です。まず、体表から胸膜腔と肺の状態を推定します。
触診可能な体表の指標により、胸膜腔と肺の正常な輪郭の位置を知り、肺葉と肺裂の位置を推定することができます。上方では、壁側胸膜が第一肋骨の上方へ突出しており、胸骨下部の後方では、心臓が左側にある関係で左臓側胸膜は右ほど正中線には近づいてはいません。下方で、胸膜は横隔膜上の肋骨弓で折り返しています。下の図のように、背部から見てみると、胸膜腔はTh12のあたりまで存在しています。肺尖部はTh1付近、肺の上葉と下葉を分ける斜裂(Oblique fissure)は背部正中近くでTh4の棘突起の高さにあります。斜裂は外側下方へ向かって移行し第4,5肋間隙を横切り、外側では第6肋骨に達します。また、前回やりましたが肩甲骨下角はTh7-9、腸骨稜頂上部がL4に相当し、その二つを結んだ直線の中点がおおよそのTh12に相当、そこが肺底部でした。さらに前胸部から側胸部第4-6肋間が中葉、舌区に相当します。これらのメルクマールを意識して聴診を行っていきます。
解剖を知ることは聴診において重要な事です。例えば中葉の気管支拡張症、下葉の間質背肺炎、気道内異物など好発部位がある疾患と部位の特定が必要な病態に関しては聴診上最強点の同定する必要があります。対して細菌性肺炎の細かい部位に関しては同定する必要はなく(かなり難しいとは思いますが仮に同定できても治療はほとんど変わりません。右か左かだけで十分です。)、むしろ緊急性の評価を行い早急に対応する事の方がもっと重要です。
このように、大きく分けるとstridorとそれ以外になります。これは、病変部位が胸腔内か胸腔外かで分けています。病変が胸腔外であればstridor、他はすべて胸腔内の病態で得られる所見です。
Stridorは声帯よりも上部の気道の狭窄が生じた際に聴取される音で、音の聞こえ方としてはwheezesと同様です。wheezesとの違いは①吸気時に聴取②頚部で最強という事です。この違い、特に吸気時に聴取される理由は下の図の通りです。まず吸気時には横隔膜が収縮する事で胸腔内が陰圧になります。それに伴い胸腔内に空気が引き込まれ、引っ張られるような形で胸腔外の気道はへこむ訳です。
ここからはrhonchiとwheezesの話をしていきますが、それに伴いまず気管・気管支の解剖、組織学的な特徴を確認します。気管や気管支は平滑筋という筋肉でできている管腔臓器であるため、広がったり縮んだりします。しかし、過度に広がったり縮んだりすると問題が生じるので、それを制御する機能があります。その一つが気管軟骨です。気道の解剖を見てみると中枢気道(気管)とそれ以降の気管支の構造が違うことに気づきます。気管軟骨は気管ではC字型で気管をしっかり取り巻いていますが、主気管支から葉気管支以降になると軟骨はまばらになります。このまばらな軟骨の事を軟骨片と言います。軟骨は終末細気管支より抹消ではなくなり、肺胞管、肺胞となります。なぜこのような構造になっているのかというと、気管はつぶれたら死んでしまうのでしっかり固める、肺へ向かう気管支は空気を効率よく肺胞まで送り出す必要があるためある程度拡張するようになっています。終末細気管支以降はガス交換を行うところなので、軟骨があると逆に効率が悪くなるので軟骨はありません。気道は中枢の方は固くできていますが、抹消にいけばいくほど柔らかくなっているという事です。
Stridorの時は吸気時に狭窄が強くなるため、聴取されるのは吸気時でしたが、wheezesとrhonchiは吸気呼気ともに聴取されます。胸腔内の気管支は胸腔内が陽圧になると狭窄が強くなるため呼気時に聴取する(下図)というのが原則ですが、病態によっては吸気時にも聴取されます。
例えば気管支喘息の発作が起きた時を考えます。先ほど確認した通り気管支は末梢にいけばいくほど柔らかくなるので、末梢の方から狭窄していきます。発作のごく初期の非常に軽いフェーズでは狭窄も軽度であるため通常の呼吸では連続性ラ音は聴取されません。このフェーズで発作を捕まえるためには強制呼出をさせ胸腔内を強制的に強い陽圧にすることで誘発されるwheezesを聴取し、診断します。さらに狭窄が強くなれば平静呼気時に聴取されるようになり、いずれは吸気時にも聴取されます。吸気時に聴取される病態としては、胸腔内が陰圧になり、胸腔内の気管支が拡張する訳ですが、それでも狭窄が解除されないほど進行している状態ということになります。また、発作が重症であればあるほど狭窄している気管支も、より太い気管支まで障害されるためwheezesとrhonchiが混在したような音が聴取されるようになります。最重症の状態になるとラ音が聴取されなくなります。(連続性ラ音が発生するためには十分な空気の流速が必要であり、狭窄が非常に強い場合は十分な流速が確保できないのでラ音が消失します。)フェーズにより聴診所見は変化しますが、それを重症度として分類したものがJónsson分類 です。これを用いて「〇度のwheezesを聴取」のように記載します。
さらにwheezesを聴取する疾患は気管支喘息だけではありません。細い気管支が狭窄すれば音が発生するため、細い気管支が狭窄する病態を考えます。代表的な疾患が心不全・肺水腫です。左室ないしは左房圧の上昇により、肺毛細血管圧が上昇。血症浸透圧を越えて肺毛細血管圧が上昇すると肺の間質に水が溜まります。その水が末梢気道を圧迫することで気管支狭窄が起き、wheezesが聴取されます。(下図)
肺が過膨張になると、①肺胞が絶えず外側に膨れ上がろうとするので、②その分空気が気管支側から引き込まれます。それに伴い③比較的太い気管支が引っ張られて狭窄するためrhonchiが聴取されるという事です。さらには慢性の気道炎症と気管支壁の肥厚、分泌物の増加などもrhonchiの原因の一助となっています。
ちなみに気道の分泌物(痰)のみでもrhonchiを聴取しますが、咳をしてもらうと音が変化する(うまくいけば消える)事で分かります。また痰の場合は単音性(monophonic)(下でお話します)になる事が多く、閉塞性肺疾患の病態とは分けることが可能です。
ここまで連続性ラ音について見てきましたが、聴診して診断名を決めるというよりは、聴診所見を考察して病態を考える事が重要です。診断を焦るのは誤診の元になります。聴診所見から音の高いor低い、単音性or多音性を確認してどこに狭窄がどの程度の範囲にあるのかを推測し、その病態を考え、自分が考えている診断と矛盾がないかを照らし合わせるというステップを毎回踏む必要があります。病態により対応は全く異なります。(気道内異物と気管支喘息の発作では全く違いますね。)
<今回のまとめ>
今回は肺の聴診②副雑音~連続性ラ音~について考えてみました。患者さんの呼吸状態を把握する上で、聴診は重要であり、正常からの逸脱を意識することでさらに病態の理解が深まります。
最後にもう一度言いますが、「聴診所見から診断名をつけるのではなく、病態を推測する!」これが重要です。日々訓練をしながら正確な評価ができるようにしていきたいですね。
身体診察はやればやるほど奥が深い!
次回は肺の聴診③副雑音~断続性ラ音~について考えてみようと思います。
<参考文献>
皆さん暑い日が続いていますね。緩和ケアセンターの川口です。
さて当院は様々な学会認定施設となっております。
日本在宅医療連合学会の認定施設にもなっており、専門医研修プログラムを有しております。
当院の古屋医師がプログラムを終了し本年度の専門医試験に見事合格いたしました!
ポートフォリオ作成、他の医療機関研修など日々の診療の合間の中でとても多忙な1年間だったと思います。
おめでとうございます!
これで専門医は2名となりました。
今後、在宅医療連合学会専門医を取得したい若手医師が当院に入職してくれることを期待しています。
写真ですが欠かさず筋トレをすると我々のような肉体を作ることもできます!
夏を乗り切るのは・・・筋肉です!!
※本ブログを執筆した古屋医師は2021年4月~2025年3月まで鳳優会に在籍
荏原ホームケアクリニック リウマチ・膠原病センターの古屋です。 前回「胸部の打診」についてお話させていただきましたが、今回から「肺の聴診」についてお話しようと思います。これまで触診、打診ときましたがいよいよ聴診です。聴診もこれまで同様に解剖学的、組織学的な気管支や肺胞の特徴と換気力学を理解することで、さらに理解が深まります。まず今回は聴診①として正常な呼吸音について考えていきたいと思います。聴診を考える上で外せないのはRené-Théophile-Hyacinthe Laennec (1781-1826)です。当時は患者さんの胸に耳をあてて聴く「直接聴診法」が主流で、医師はハンカチ(その上から耳を当てるため)を懐に忍ばせていました。この直接聴診法に対して間接聴診法を考案したのがLaennec医師です。
Laennec医師は自身の論文でこのように記しています。「木片の一端に耳を押し当てると、もう一端をピンで引っかいた音がよく聞こえるということである。そこで私は紙を丸めて筒状にし、一端を心臓のあたりに押し当て、もう一端を私の耳にあてた。すると心臓の鼓動が耳を直接押し当てたときよりはっきり聞こえた。」さらに、これに加えて子供たちが長い中空の棒を使って遊ぶ様子を見たことがあり、それが聴診器の発明に繋がったと言われています。打診のAuenbrugger医師もワインの樽からヒントを得て診察手技を考えたと言われていますが、Laennec医師もすごいです。普段何気なく見ている光景の中に診療のヒントが隠れているかもしれませんね。非常に勉強になります。
世界初の聴診器は1816年に発明されました。これは長さ25cmの木の筒(図右)だったようです。
このように聴診器を用いて行う聴診方法を直接聴診法と対比させ「間接聴診法」としました。
また、Laennec医師は聴診器から聞こえる音を色々分類しました。rales、rhonchi、crepitanceなど命名しそれは現在でも使われています。聴診器は当初はなかなか受け入れられなかったようですが、現在聴診器は診察に不可欠なものになっています。もし聴診器がなかったらと思うとゾッとしますね。Laennec医師はまさに聴診王と言えるでしょう。そのLaennec医師も最期は自らの発明した聴診器で肺結核と診断されこの世を去りました。
前回胸部の打診でも確認しましたが、診察手技の前にまず肺・胸郭の解剖を再度確認しましょう。聴診を行う時は、「胸郭の内側・肺の状態をイメージする」ことに加え、換気力学や気道の解剖・組織学の知識が重要です。まず、体表から胸膜腔と肺の状態を推定します。
触診可能な体表の指標により、胸膜腔と肺の正常な輪郭の位置を知り、肺葉と肺裂の位置を推定することができます。上方では、壁側胸膜が第一肋骨の上方へ突出しており、胸骨下部の後方では、心臓が左側にある関係で左臓側胸膜は右ほど正中線には近づいてはいません。下方で、胸膜は横隔膜上の肋骨弓で折り返しています。下の図のように、背部から見てみると、胸膜腔はTh12のあたりまで存在しています。肺尖部はTh1付近、肺の上葉と下葉を分ける斜裂(Oblique fissure)は背部正中近くでTh4の棘突起の高さにあります。斜裂は外側下方へ向かって移行し第4,5肋間隙を横切り、外側では第6肋骨に達します。また、前回やりましたが肩甲骨下角はTh7-9、腸骨稜頂上部がL4に相当し、その二つを結んだ直線の中点がおおよそのTh12に相当、そこが肺底部でした。さらに前胸部から側胸部第4-6肋間が中葉、舌区に相当します。これらのメルクマールを意識して聴診を行っていきます。
<聴診するときのポイント>
ここで普段聴診する上で意識しているポイントをお伝えします。
この中で特に気管呼吸音と肺胞呼吸音の違いは最低限意識して聴診する必要があります。気管呼吸音は高い音ですが、肺胞呼吸音は低い音になります。意識して聞いてみると音が全然違うことが分かります。ではこの音の高低の違いは何が原因でしょうか。
呼吸音の伝達において肺胞の役割は外せません。肺胞には高い音を吸収してしまう音響フィルターの機能が備わっています。つまりは気管呼吸音の部位では高い音と低い音が混在していますが、肺胞を通過するときに高い音が吸収され、低い音のみが通過してくるということです。
ここで肺胞が壊れている場合はどうなるでしょう。肺胞呼吸音が聞こえるはずの聴診部位で高い音が聴取されることになります。この現象を肺胞呼吸音の気管呼吸音化と言います。間質性肺炎や肺線維症などで聴取された場合は線維化が強く、かなり進行している状態であると考えられます。もちろん通常の肺炎でも同様の病態が起きているのでこのような所見が得られます。(ただし一時的な所見となります。) このように、「正常からの逸脱」という事を意識すると病態がより深く理解できます。
ここまで気管呼吸音と肺胞呼吸音は聴診部位と音の高低が異なることをお話しましたが、吸気と呼気の聞こえる長さも異なります。気管呼吸音は吸気:呼気=1:1、肺胞呼吸音は吸気:呼気=2-3:1となります。良く閉塞性肺疾患(気管支喘息や肺気腫など)で呼気の延長という所見がありますが、この違いを知っておかないと評価が難しいです。他、間質性肺炎に関しても進行すると肺が膨らまなくなり吸気時間が短くなりますが、この違いの理解が必要です。ちなみに気管支呼吸音は吸気:呼気=1:2程度とされています。
<今回のまとめ>
今回は肺の聴診(正常呼吸音)について考えてみました。患者さんの呼吸状態を把握する上で、聴診は重要であり、正常からの逸脱を意識することでさらに病態の理解が深まります。身体診察全般に言えることですが、日々訓練をしながら正確な評価ができるようにしていきたいですね。身体診察はやればやるほど奥が深い!
次回は肺の聴診②副雑音の1回目として連続性ラ音について考えてみようと思います。
<参考文献>
※本ブログを執筆した古屋医師は2021年4月~2025年3月まで鳳優会に在籍
荏原ホームケアクリニック リウマチ・膠原病センターの古屋です。
前回「胸部の触診」についてお話させていただきましたが、今回は「胸部の打診」について考えていこうと思います。胸部の触診は主に心臓の状態を評価するためのものでしたが、打診は肺の状態評価に使うものです。触診と同じで、聴診と比較すると手技も簡単なので必ず診るようにしています。今回胸部の打診の考え方について解剖学的、生理学的な情報を踏まえて考えてみようと思います。
打診の考案者とされているのはJosef Leopold Auenbrugger (1722-1809) と言われています。彼はワインの商人が半分満たされた樽を叩くのを観察してアイデアを得たのであろうとサパイラ身体診察のアートとサイエンスには書いてあります。これが本当だとすると、それを人体に応用しようとしたのはすさまじいひらめきです。まさに打診王と言っても過言ではないと思います。
打診とは体表面を叩いて音波を発生させ、下にある組織が振動することで、組織や構造物の密度により異なる周波数の音を発生させる手技です。つまり、叩いている部位の下にある臓器の密度(空気が多いのか少ないのか)を知ることで臓器の境界を知るための手技というわけです。
所見 | 感度(%) | 特異度 | LR+ | LR- |
---|---|---|---|---|
比較打診法 濁音 発熱と咳嗽のある患者の肺炎 胸部X線画像での何らかの異常 呼吸器症状のある患者での胸水 |
4-26 8-15 89 |
82-99 94-98 81 |
3.0 3.0 4.8 |
NS NS 0.1 |
局在打診法 横隔膜の可動域<2cm 慢性気道閉塞の検出 |
13 |
98 |
NS | NS |
聴性打診法 異常濁音 胸部X線画像での何らかの異常 胸水の検出 |
16-69 58-96 |
74-88 85-95 |
NS 8.3 | NS NS |
所見 | 感度(%) | 特異度 | LR+ | LR- |
---|---|---|---|---|
座位で濁音界が鎖骨中線より外側へ広がる場合 心胸郭比が0.5以上 |
97 |
60 |
2.4 |
0.1 |
臥位で濁音界が胸骨中線から10.5cm以上外側へ広がる場合 心胸郭比が0.5以上 |
97 |
61 |
2.5 |
0.05 |
それでは診察手技の前にまず肺・胸郭の解剖を確認します。胸部の打診を行う時も、心臓の診察と同様、「胸郭の内側・肺の状態をイメージする」ことが重要だと思うので、解剖学的な肺の位置や構造を知ることが重要です。
触診可能な体表の指標により、胸膜腔と肺の正常な輪郭の位置を知り、肺葉と肺裂の位置を推定することができます。上方では、壁側胸膜が第一肋骨の上方へ突出しており、胸骨下部の後方では、心臓が左側にある関係で左臓側胸膜は右ほど正中線には近づいてはいません。下方で、胸膜は横隔膜上の肋骨弓で折り返しています。下の図のように、背部から見てみると、胸膜腔はTh12のあたりまで存在しています。また肺の上葉と下葉を分ける斜裂(Oblique fissure)は背部正中近くでTh4の棘突起の高さにあります。これは外側下方へ向かって移行し第4,5肋間隙を横切り、外側では第6肋骨に達します。他の細かい肺の解剖や換気力学などは呼吸音の会に譲りますが、打診を理解するためにはこれくらいの知識が必要です。
★Skodaの共鳴音(図左)
胸水の上方の部分を打診すると過共鳴音(鼓音)が聴取されるという所見です。
★Grocco三角(図右)
大量胸水がある反対側の背部に出現する直角三角形の濁音界を認めるという所見です。
Skodaの共鳴音に関しては音の原因は分かっていませんが、本来直下の軟部組織は肺であり、胸水により肺はつぶれている可能性もあります。つまりは聴取される打診音は清音もしくは濁音であるべきです。また、Grocco三角に関しては胸水が内側から胸壁を圧迫し胸郭の動きに制限がかかることで反対側に濁音が生じると言われています。これらの事から、打診部位直下の軟部組織だけでは音の発生は説明できず、胸郭共鳴仮説を支持する事象であると言えます。胸郭共鳴仮説が正しいというのが現在の主流の考え方です。
ここから言えるのは、上にも述べましたが打診を行う際は「座位」の体位をとるべきであるという事です。仮に臥位を取った場合、胸郭の動きに制限が出ることで正確な音が判断できないこと言うことになります。在宅では寝たきりの患者さんも多くらっしゃるので、可能な限り支えてもらい座位を取りますが、座位が取れない場合は打診の所見の評価は慎重であるべきです。
所見 | 感度(%) | 特異度 | LR+ | LR- |
---|---|---|---|---|
比較打診法 濁音 発熱と咳嗽のある患者の肺炎 胸部X線画像での何らかの異常 呼吸器症状のある患者での胸水上 |
4-26 8-15 89 |
82-99 94-98 81 |
3.0 3.0 4.8 |
NS NS 0.1 |
聴性打診法 異常濁音 胸部X線画像での何らかの異常 胸水の検出 |
16-69 58-96 |
74-88 85-95 |
NS 8.3 |
NS NS |
次回は肺の聴診について考えてみようと思います。
リウマチ・膠原病センターの古屋です。
2023年7月12日に八王子で「関節リウマチ患者さんの在宅診療を考える会」が開催され、古屋が講演してきました。
八王子は品川区とは多少の地域差もありますが、在宅医療で困っていることは同じであると改めて認識させられました。品川区ではICTを用いた多職種連携はまだまだこれからですが、八王子では数年前から「まごころネット」という情報共有のツールを用いて在宅医療の連携を図っておられました。問題点もあるとの事でしたが、これから絶対必要なシステムだと思うので、とても勉強になりました。
今回の勉強会で関節リウマチの在宅診療というテーマでお話しさせていただきましたが、この会を通していろいろな先生方と意見交換ができ、とても有意義な会に参加することができました。今後もこのような会には積極的に参加していこうと思います。
診療アシスタントの野田です。
当院の大中医師、古屋医師と共に学会に参加してきました。
学会への参加は初めてでしたが、在宅医療が現在抱えている問題点など、
たくさんの気づきが得られる貴重な時間となりました。
また、診療アシスタントとして発表もさせていただきました。
職種を問わず、学会への参加などを後押ししてくれる職場環境に感謝です。
2023年6月22日に第1回城南地区在宅医療ネットワークを開催いたしました。
昨今のコロナ禍に伴い、多職種間の交流が少なくなり、各事業所間での顔の見える関係作りが難しい情勢が続きました。その中で、皆様も各事業所間の密な連携の重要性に気づかされる場面に多々遭遇してきました。超高齢化社会を迎える日本において、生産年齢人口が減少する中、我々医療者は一丸となり総力戦で立ち向かう必要があります。
これから在宅医療の需要が増してくる中で、在宅医療ネットワーク構築は必須の課題かと思われます。これまで、「密」を避ける目的から勉強会の開催はできていませんでしたが、連携の強化を行うにあたり、まず顔の見える関係作りを行う必要があると考え、勉強会という形を用いて関係作り基盤構築のため「城南地区在宅医療ネットワーク」を設立しました。
今回は関節リウマチをテーマにグループワークを交えた勉強会を行いました。炎症=機能障害という考え方から関節の機能障害の理解、関節リウマチの患者さんの困りごとまでみんなで考えました。みなさん積極的に討議に参加していただき、とても有意義な会ができたかと思います。
今回の会は「はじまり」であり、これから真の在宅医療ネットワークを作っていく必要があります。2040年問題という大きな壁が立ちはだかる状況ですが、城南地区の在宅医療へ関わるスタッフの方々の熱い思いがあればきっと良いネットワークができ、総力戦で乗り切ることができると確信しました。
今回集まっていただいた方々だけでなく、たくさんの人とのご縁を大切にして全国へ発信できる在宅医療ネットワークを目指していきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
城南地区在宅医療ネットワーク 責任者
教育委員長 リウマチ・膠原病センター 古屋秀和