第33夜 がんの皮膚転移について

川口です。

秋めいてきました。
最近は椅子の上に両足をのせて腕立て伏せをしてパンプアップに励んでいます。

今回はがんの皮膚転移にどのような軟膏で対応したかを取り上げます。
☆がんの皮膚転移は5~10%の頻度でみられると言われています。
乳がんにおける発生率が一番高いと言われています。他には肺がん、腎臓がん、大腸がん、卵巣がん、頭頚部がん、膀胱がん、性器がんなど挙げられます。

Q:皮膚転移すると何が問題?

皮膚潰瘍を生じた場合の処置が問題となります。
・進行していく
・浸出液、臭気、出血、痛みなどの症状がある
・見た目や臭気などから精神的苦痛が生じる
・出血、臭気があり処置時の恐怖感が生じる

身体的苦痛以外に患者さんの精神的苦痛、御家族のケアが大切です。

Q:どのように進行していく?

皮下の硬結・発赤→腫瘤形成→腫瘍の壊死・自壊・潰瘍形成→浸出液・出血・痛みが問題→嫌気性菌感染による悪臭→創部の拡大 というように進行します。
~症例~
80歳 女性
大腸癌術後 
腹部正中に手術創 周囲に数か所腫瘤あり
内服薬:ロキソニン(NSAIDSと呼ばれる痛み止め)、ムコスタ(胃の粘膜保護薬)
ロキソニンで疼痛はコントロールできていました。
腫瘤は徐々に大きくなり皮膚自壊を起こしました。
最初は臭気、出血もなく洗浄後アズノール軟膏を塗布しガーゼ保護で対応していましたが皮膚自壊以降、処置時の痛み・臭気・出血が目立つようになりました。
出血はじわじわとにじみ出るように認め止血作用のあるアルト原末を使用し対応しました。
その時点で洗浄、軟膏、アルト原末など家族の処置が大変に!
~どのように対応したか?~

内服のロキソニン(NSAIDS)は血小板に対する作用があるためアセトアミノフェンに変更。 処置時の痛みは皮膚転移巣で自由神経終末が露出し刺激されて生じる事が原因と考えられます。
安静時の痛みはアセトアミノフェン内服で消失していました。 痛みと出血と臭気に対して…
アズノール軟膏にロゼックスゲル(メトロニダゾール、臭気対策)、アルト原末(止血目的)、キシロカインゼリー(表面麻酔、処置時の疼痛対策)を薬局に混合してもらいました。
ガーゼをはがした際に出血が生じる為、ドラッグストアなどでフィルムがコーティングされているようなガーゼを購入して頂き変更しました。
ベッドサイドに活性炭の消臭剤を臭気対策として置きました。

上記対応で家族も楽に処置ができるようになり臭気も軽減し何よりも患者さん自身が毎日の軟膏処置で生じる痛みも軽減し嫌がることが無くなりました。

がん性皮膚潰瘍の処置で使用する軟膏は各医療機関で色々な物が使用されます。
止血対策もアルト原末以外にも様々な物が使用される事があります。
また別の軟膏を調合し対応した場合は再度ブログアップしようと思います。
今回はここまでにしましょう。

写真は実際の症例です。

筋トレをしていると一体どんな効果が出るのかがわかる写真も今回は載せてみました。