→ レカネマブの「皮下注射」が登場 ― アルツハイマー病治療のハードルが大きく下がる可能性 ―

こんにちは、あすかホームケアクリニックです!

アルツハイマー病の治療に、大きな変化が起こりました。

2026年9月、日本でレカネマブ(商品名:レケンビ)の皮下注射製剤「レケンビ皮下注250mgペン」が承認されました。

これまでのレカネマブは、基本的に医療機関で点滴による治療を行う必要がありました。

今回、週1回の皮下注射という新しい選択肢が加わったことで、アルツハイマー病の治療が、これまでよりも身近なものになる可能性があります。

これまでのレカネマブ治療は「点滴」が中心でした

レカネマブは、アルツハイマー病の原因の一つと考えられているアミロイドβ(Aβ)に働きかける抗体医薬です。

これまでの製剤では、

  • 2週間に1回の投与
  • 医療機関への定期的な通院
  • 点滴のための滞在時間
  • 治療に伴う検査や経過観察

などが必要でした。

治療そのものだけでなく、

  • 「病院まで通うことが大変」
  • 「仕事や介護との両立が難しい」
  • 「高齢の本人を毎回連れて行くのが大変」

といったことも、治療を継続するうえでの大きなハードルになります。

皮下注射になると何が変わるのでしょうか?

今回承認された「レケンビ皮下注250mgペン」は、週1回、500mgを皮下注射する製剤です。

1本あたりの投与時間は約15秒とされ、医療機関での点滴に比べて投与そのものにかかる時間を短縮できます。

さらに、条件を満たした患者さんでは、医師の管理・指導のもと、自宅で本人または家族・介護者が投与することも可能になります。

つまり、

「病院へ行って点滴を受ける治療」
から、
「生活の場で継続できる治療」
へ、治療の選択肢が広がる可能性があります(あすかホームケアクリニックでは在宅でのレケンビ投与も行っております)。

これは患者さん本人だけでなく、ご家族や介護者にとっても大きな意味があります。

治療の「ハードル」が大きく下がる可能性

アルツハイマー病の治療では、薬の効果だけでなく、

「その治療を無理なく続けられるか」

という視点も非常に重要です。

週1回の皮下注射という選択肢ができることで、

  • 通院回数や通院負担の軽減
  • 点滴に必要な時間の短縮
  • 仕事や介護との両立
  • 外出や旅行など生活上の制約の軽減
  • 医療機関側の点滴設備・人員への負担軽減

などが期待されています。

もちろん、すべての方が自宅で投与できるわけではありません。

治療開始時には医療機関での評価が必要であり、自己投与を行う場合にも、患者さんやご家族が適切に投与できることを確認したうえで、医師の管理のもとで行う必要があります。

だからこそ「早期発見」が重要です

ここで、もう一つ大切なポイントがあります。

レカネマブは、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症の進行抑制を目的とした治療です。

つまり、

「認知症がかなり進行してから治療を始める」

という薬ではありません。

できるだけ早い段階で、

  1. 認知機能の変化に気づく
  2. 必要な検査を受ける
  3. アルツハイマー病による変化なのかを評価する
  4. 治療の適応を検討する

という流れが重要になります。

「認知症になってから」ではなく「早い段階から」

アルツハイマー病では、症状が目立つようになるより前から、脳の中では病気の変化が進んでいると考えられています。

レカネマブは、こうした病態の早い段階を対象とする治療です。

そのため、

  • 「最近、同じことを何度も聞くようになった」
  • 「以前できていたことに時間がかかるようになった」
  • 「物忘れが少し増えた気がする」

といった変化を、「年齢のせいだから仕方ない」と片付けず、一度相談してみることが重要です。

早期発見・早期治療が社会にもたらす可能性

もし、アルツハイマー病をより早い段階で発見し、適切な方に治療を届けられるようになれば、患者さん本人だけでなく、ご家族や社会全体にも大きな意味を持つ可能性があります。

認知機能の低下や進行を遅らせることができれば、

  • 本人が自分らしく生活できる期間
  • 家族が介護を担う負担
  • 介護サービスへの依存
  • 医療・介護にかかる社会的負担

などにも影響する可能性があります。

もちろん、レカネマブですべての認知症を予防できるわけではなく、治療によって病気が完全になくなるわけでもありません。

しかし、「早く見つけ、治療できる人を早く治療する」という考え方が広がることには、大きな社会的意義があると考えられます。

在宅医療にも大きな変化が期待されます

今回の皮下注製剤は、在宅医療との相性という点でも注目されています。

これまで、認知症の専門的な治療を受けるためには、患者さんが医療機関まで通うことが大きな前提となっていました。

しかし今後は、

専門医による評価・診断・治療方針の決定
と
患者さんが実際に生活している「自宅」
をより近づけていくことができる可能性があります。

私たち在宅医療に携わる医療者にとっても、これは非常に重要な変化です。

「病院で治療する」だけではなく、
「治療を受けながら、住み慣れた自宅で生活する」
という選択肢を、より現実的に考えられる時代になっていくのかもしれません。

ただし、安全性への配慮は欠かせません

レカネマブは、誰にでも使用できる薬ではありません。

治療前には、認知機能だけでなく、画像検査などを含めた適切な評価が必要です。

また、レカネマブではARIA(アミロイド関連画像異常)と呼ばれる脳のむくみや微小出血などに注意する必要があり、治療中も適切な検査・経過観察が必要です。

そのため、「注射が簡単になった=治療が簡単になった」という意味ではありません。

治療のハードルは下がる一方で、「誰に治療するのか」「いつ始めるのか」「安全に続けられるのか」を適切に判断する専門的な医療は、これまで以上に重要になると考えられます。

まとめ

レカネマブの皮下注製剤の登場は、アルツハイマー病治療における大きな一歩です。

これまでの「2週間に1回、医療機関で点滴」という治療に加えて、週1回の皮下注射という選択肢が加わりました。

さらに、条件を満たせば在宅での投与も可能となることで、患者さんやご家族の通院負担を減らし、治療を継続しやすくする可能性があります。

そして、この治療を本当に生かすためには、

「早く気づく」 → 「早く検査する」 → 「適切な方に早く治療を届ける」

ことが重要です。

認知症は「症状が進んでから対応する病気」から、「早期に発見し、進行を抑えることを目指す病気」へと、少しずつ考え方が変わりつつあります。

あすかホームケアクリニックでも、患者さん・ご家族が安心して生活を続けながら、必要な医療につながることができるよう、今後も認知症診療・在宅医療に取り組んでいきます!

レカネマブの皮下注射製剤が日本で承認されました


参考文献・出典

  1. van Dyck CH, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease. N Engl J Med. 2023;388:9-21. doi:10.1056/NEJMoa2212948.
  2. van Dyck CH, et al. Long-term safety and efficacy of lecanemab in early Alzheimer’s disease: Results from the Clarity AD open-label extension study. Alzheimer’s & Dementia. 2025;21:e70905. doi:10.1002/alz.70905.
  3. Hersch S, et al. Clinical and Pharmacologic Profile of a Subcutaneous Lecanemab Formulation. Alzheimer’s & Dementia. 2025;21:e104691. doi:10.1002/alz70859_104691.
  4. Nakashima S, et al. Therapeutic Time Window of Disease-Modifying Therapy for Early Alzheimer’s Disease in Japanese Individuals: Analysis Based on J-ADNI Study. Geriatr Gerontol Int. 2026. doi:10.1111/ggi.70698.
  5. Nakashima S, et al. Therapeutic time window of disease-modifying therapy for early Alzheimer’s disease. 2025.

●訪問診療対応エリア●
北区・板橋区・豊島区全域
足立区・文京区・荒川区・練馬区・新宿区・川口市、戸田市の一部地域