第25夜 緩和医療について〜オピオイドについて①〜

川口です。
暑い日が続きますね。皆さん、体調は崩していませんか?
今回は “オピオイドの増量”を説明しようと思います。

☆オピオイドを使用しているが痛みの訴えがある
まず持続痛か突出痛かを判断!

~持続痛が緩和されていない~
オピオイドの副作用(吐き気、便秘、眠気など)がなければ定期投与量の増量を行います。オピオイドの副作用がある時は副作用対策を行いながら増量するかオピオイドスイッチ(他のオピオイドの変更する事)、投与方法の変更、鎮痛補助薬の追加、神経ブロックなど検討します。
~突出痛が緩和されていない~
予測できる突出痛、予測できない突出痛、定時鎮痛薬の切れ目の痛みかを判断します。予測できる突出痛の場合はあらかじめレスキュー薬の投与を行います。定時鎮痛薬の切れ目の痛みには定期投与量の増量、投与間隔の短縮を行います。鎮痛効果不十分な時はレスキュー薬の増量、定期投与量の増量など行います。
実際の症例をもとに説明していきます。
~症例~
50歳 女性 胃癌
アセトアミノフェン300㎎を朝、昼、夕、就寝時と内服していたが痛みがひどくオピオイドを使用している。
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オキシコドン10㎎ 2錠 分2(8時、20時)
アセトアミノフェン300㎎ 4錠 分4(朝、昼、夕、就寝時)
ノバミン5㎎ 3錠 分3(朝、昼、夕)
酸化マグネシウム250㎎ 3錠 分3(朝、昼、夕)
スインプロイク0.2㎎ 1錠 分1朝
オキノーム散2.5㎎ 疼痛時頓用
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(解説)オピオイドの副作用対策としてノバミン、スインプロイク、酸化マグネシウムを使用しています。
☆オピオイドの消化器系副作用として吐き気、嘔吐、便秘があります。
吐き気、嘔吐はオピオイド投与初期、増量時にみられる事があります。数日以内に治まってくることが多いです。
吐き気対策…ノバミンを使用しています。
~豆知識~
吐き気対策として他にはハロペリドール(セレネース)、吐き気が体動時に生じる場合は抗ヒスタミン薬、胃内容物貯留や腸管運動抑制で生じる場合は消化管運動亢進作用のあるドンペリドン(ナウゼリン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、非定型抗精神病薬としてオランザピン(ジブレキサ)などの投与を行う事があります。

便秘はオピオイド使用中の患者さんに高頻度で生じます。
便秘対策…酸化マグネシウム、スインプロイクを使用しています。
酸化マグネシウムやラクツロースなどの便を柔らかくする浸透圧性下剤、ピコスルファートやセンノシドなどの腸蠕動を促進させる大腸刺激性下剤を使用します。

~豆知識~
オピオイドは脳のμ(ミュー)受容体を介して鎮痛作用を発揮しますが腸管に存在するμ受容体にも作用して腸の運動が抑えられ便秘になります。
スインプロイクは腸管のμ受容体へ作用する事をブロックします。オピオイドによる腸の運動抑制に拮抗し便通を解消させる薬剤です。
続きです。
“レスキューのオキノーム散を1日に4,5回使用していた。”
(対応)
・基本的には現在使用しているオピオイド量の50%を増量します。この症例では20㎎使用しているので30㎎に増量します。
・もしくは1日のレスキュー使用合計量を定時使用量に加えてもOKです。レスキューを4回使用しているとして2.5㎎×4回で10㎎、定時使用の20㎎に10㎎を加えて30㎎となります。
ただし全身状態不良な場合など状況次第では50%増量ではなく30%増量に抑える事もあります。
また定時使用のオピオイドを増量したらレスキュー薬も1日合計量の10~20%(約1/6)に増量します。

緩和医療イメージ

☆基本的な増量法は上記のように考えて行いますが、患者さんの全身状態や疼痛の程度を見極めながら微調整しながら用量調整をおこなっています。

今回はここまでにしましょう。
涼しい秋が待ち遠しいですね!次回もオピオイドについてとりあげます。