第24夜 緩和医療について〜癌性疼痛〜

川口です。
暑い日が続きますね。
ワールドカップ観戦で寝不足の方もいらっしゃるでしょうね。
私はクロアチア代表を応援しています!

今回は癌性疼痛に対してオピオイドを使用し緩和治療を行っている実際の症例も取り上げながら説明します。
痛みには持続痛と突出痛があります。
 
持続痛:1日のうち大半に認める持続的な痛み。
突出痛:持続痛の有無や程度・薬の使用有無に関わらず発生する一過性の増強する痛み。

~補足~
予測できる突出痛、予測できない突出痛、鎮痛薬の切れ目の痛みに分けられます。

予測できる突出痛
歩行、立位、座位などの体動時に生じる痛み。あらかじめ予測できる痛みです。
予測できない突出痛
痛みの誘因があるものとないものに分けられます。咳や消化管の動きなど自分の意思とは無関係な動きが誘因となります。
鎮痛薬の切れ目の痛み
定期的に内服している鎮痛薬の血中濃度の低下に伴い出現する痛みです。

 
☆痛みの治療を行う上で、痛みがどれくらい日常生活に支障をきたしているか、どれくらいの痛みなのかを評価します。

~日常生活への影響~
痛みで寝れませんか?痛みで日常生活にお困りですか?など質問をするようにしています。
STAS-J(Support Team Assesment Schedule日本語版)と呼ばれる評価方法があります。

0:なし
1:時折のまたは断続的な単一の痛みで患者が今以上の治療を必要としない
2:中等度の痛み。時に調子の悪い時がある。痛みの為、病状からみると可能なはずの日常生活動作に支障を来す。
3:しばしばひどい症状がある。痛みによって日常生活動作や物事への集中力に著しく支障を来す。
4:持続的な耐えられない激しい痛み。他の事を考える事ができない。

(~がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインより抜粋~)
 

~痛みの強さ~
痛みの強さは治療効果判定の為にも重要です。評価方法としてNRS(Numerical Rating Scale)、VAS(Visual Analogue Scale)、VRS(Verbal Rating Scale)などがあります。

私は主にNRSを日ごろ用いています。

NRS:痛みを0から10の11段階に分け、全く痛みがないのを0、最悪の痛みを10として点数で評価してもらう。
VAS:10㎝の線を書いて左端を痛みなし、右端を最悪の痛みとして痛みの程度を印としてつけてもらう。
VRS:3段階から5段階の痛みの強さを表す言葉を順に並べ(痛みなし、少し痛い、痛い、かなり痛い、耐えられないくらい痛い)評価する。

 
次にオピオイドをどのように使用するのかを説明した上で症例を取り上げます。
☆定期的に内服するオピオイド以外に突出痛が出現した場合に使用するレスキュー製剤と呼ばれる薬剤を準備します。☆
レスキュー製剤は突出痛を取り除く目的で使用する為、速効性の薬剤です。
 

~症例~
70歳 男性 肺癌 多発骨転移
安静にしていると痛みは問題ないが食事の時に座位になると激痛が出現。
激痛を恐れ食事が思うように摂取できない。
定期薬:オキシコドン徐放製剤、アセトアミノフェン、その他
レスキュー:オキシコドン速効性剤(オキノーム)

Q:この患者さんの問題点は?

激痛が出現する為食事が思うように摂取できない事です。
安静時の痛みは問題なく体を動かすと痛みが生じています。この激痛は予測できる突出痛です!
定期的に使用しているオピオイドの量を変更する必要性は少なく、いかにレスキュー薬を使用するかがポイントです!
食前30分くらいにあらかじめレスキュー薬を内服させます。すると痛みが抑えられ食事を摂取できるようになりました。
このように突出痛が出現したら使用するのみではなく痛みが出現する事が予測される場合は事前に薬を飲んで痛みを抑える事も可能です!
~症例~
70歳 女性 大腸癌 多発肝転移 
オピオイドを使用しているが常に痛くて日常生活に支障がでている。
定期薬:オキシコドン徐放製剤、アセトアミノフェン、その他
レスキュー:オキシコドン速効性剤(オキノーム)

Q:この患者さんの問題点は?

常に痛みを自覚しており日常生活に支障をきたしている点です。
現在のオキシコドン量で除痛できていない状況です。レスキュー製剤を使用する頻度も多い状況です。
そこで定期的に使用しているオキシコドン徐放製剤を増量、レスキュー製剤の
増量したところ疼痛は軽減されました。

 

症例を簡略にしてみました。
どうですか?癌性疼痛もしっかりオピオイドを調整する事で抑えられ日常生活をおくる事も可能になります。
今回はここまでです。

 
次回は“オピオイドをどのように増量していくのか”を説明しようと思います。