日々の訪問診療で気付いたこと

私は研修医二年目で地域医療の一環として、荏原ホームケアクリニックで

1ヶ月間お世話になっている医師です。

普段大学付属病院で研修生活を送っている私は『訪問診療』といった

まったく異なるパターンの医療提供は非常に新鮮でした。

 

まず第一に、お医者さんと患者さんとの距離の近さです。

患者さんのお宅にお邪魔して、定期診察を行う先生方の様子は

居住空間にすんなりと溶け込んでいました。

 

「今日も暑いね。」

「今日のお昼はなにを食べるの?」

気軽な声かけから、患者さんの緊張がほぐれ、笑顔が生まれます。

「先生が来るのを、今朝早くから待っていたんだよ~」

「暑かったでしょ、アイス食べていきなさい」

近所のおじいちゃん、おばあちゃんのお家にいるような錯覚に陥るほど

あたたかな光景がありました。

 

病院と異なり少ない機材で患者さんの変化を読み取り必要な治療を行っていくことは、

検査機器が揃っている病院の診療よりも経験と知識が必要なことも実感しました。

また、毎回おなか周りを触れることで栄養状態がわかり、

舌をみることで脱水の状態を知ることができる。

このような、診療の原点といえる身体診察の重要性を再確認することが

たくさんありました。

そして、医療において基盤となる『人と人とのつながり』の大切さを感じました。

良好な関係を築いているところには必ず『笑顔』があります。

自分の笑顔が相手の笑顔を誘い、相手の笑顔に自分も誘われます。

気軽な声かけによって、笑顔がうまれ、関係性がぐっと濃くなります。

医療を提供する側とされる側という関係性から、より親密な関係へと

発展するのでしょう。

その関係性は日々の診療で患者さんと真摯に向き合っていく過程から生まれた

賜物であり、自分自身のやりがいにつながっていくことが身をもって体験できました。

 

この研修期間を通して、いくつもの医療の原点を見直す機会を頂けたと思っております。そして、日々『一生懸命』を続けていくことで結果が生じ、

不思議と『ワクワク楽しく』医療職を全うすることができることを学びました。

今後ここで得られた貴重な経験を生かし、

医師として日々成長していけたらと思っております。