第36夜 がん終末期や他の疾患終末期の気道分泌に伴う呼吸困難について

川口です。

むし暑い季節になってきました。
今回はがん終末期や他の疾患終末期の気道分泌に伴う呼吸困難についてです。
お亡くなりになる数日~数時間前に喉の付近でゴロゴロと音がすることがあります。死前喘鳴(Death rattle)と呼ばれます。
意識レベルの低下に伴い唾液や痰が声帯付近に貯留し喘ぐような声が出て常にゴロゴロと音がします。
吸引をしても完全に取りきれる事は難しいです。
介護している御家族は大丈夫かな?苦しくないのかな?と思うはずです。
「無理ない程度に口の中だけを吸引しましょう、口腔内スポンジブラシで口の中に貯まっている唾液をふき取りましょう」と我々は御家族に説明します。

☆大切なのは介護者である御家族の不安を取り除いて穏やかで静かな最期を迎える環境を整えてあげる事です!☆

「ゴロゴロと音がしてつらそうな表情をしています」「ゴロゴロという音がつらそうです」と言う御家族は多いです。

実際の症例です。

~症例~
60歳 男性
大腸がん 多発肺転移
疼痛コントロールはモルヒネ塩酸塩の持続点滴で対応
高カロリー点滴(30ml/時)を行っている
意識レベルも低下しお看取りは近づいている
御家族より「呼吸の度にゴロゴロという音がして不安です」とコール
常にゴロゴロと音がして不安で御家族が夜寝れない状況でした

点滴量の見直し
点滴量を30→20ml/時(もしくは10ml/時)に減量
1日量で500ml以下にする事も大切です
抗コリン薬の使用
気道壁には副交感神経に支配されているムスカリン受容体が存在しM1、M2、M3のサブタイプが気道に関連しています。M3受容体に対するアセチルコリンの結合阻害により気管支収縮を抑制、M1およびM3への結合阻害により気道分泌を抑制します。
私はクリニックに置いている薬剤でブスコパンを使います
この症例では高カロリー点滴の中にブスコパンを20㎎混注し持続点滴しました。
点滴をしていない症例では生理食塩水500mlにブスコパンを混注し持続悲観的を行うこともあります。
ブスコパン20㎎で開始して落ち着けば20㎎で維持しますが状況により40㎎まで増やす事もあります。

本症例では点滴量の見直しとブスコパン20㎎の持続点滴でゴロゴロは軽減、消失し穏やかな最期を迎える事ができました。

こういった状況ではまず連日往診をすることが多く、上記の処置以外に時間をかけて御家族のケアもすることが大切と思います。

今回はここまでです。
最近、自重トレーニングでは物足りなさを感じてトレーニングチューブを買ってパンプアップさせています。
その成果を写真でお見せしちゃいましょう!