第34夜 がん性腹水の緩和について

川口です。

12月です。クリスマスが近づいてきました。

皆さん忙しい時期ですね!

今回はがん性腹水の緩和についてです。 お腹の中には通常少量の腹水があります。約20~50ml程度の量です。腹膜で産生、吸収され一定量に調整されています。
がん以外で腹水が増える原因として肝硬変、腎不全、心不全などがあげられます。 がんによって腹膜播種を起こした場合、肝転移や合併する肝硬変による門脈圧亢進、がんによるリンパ管閉塞などでがん性腹水が貯留します。

Q:腹水が貯まるとどうなるの?

少量であれば通常、症状は起きませんが多量になると様々な症状が出現する事があります。

腹部の張り・膨満感→不快感、張り裂けそうな痛みを訴える事があります。
呼吸困難・息切れ
消化不良・便秘
吐き気
疲労感

Q:ではどのようにして在宅で症状を和らげるの?

利尿剤(フロセミド、スピロノラクトンなど)、ステロイド(デキサメタゾン、ベタメタゾンなど)を私は用います。痛みがある場合はオピオイドを用います。

Q:それでもお腹が張ってつらい時はどうするの?

腹水を抜きます。在宅でも可能な処置です。 腹部エコーを用いて穿刺部位を決めます。穿刺部位を消毒して局所麻酔を行います。麻酔薬を皮下に注入し針先をすすめ腹膜まで麻酔を浸潤させます。そのまま腹腔内に針をすすめ腹水を抜きます。 私はその際、点滴に使用する針を用いてチューブをつなげて1~2時間程度かけて持続的に抜くようにしています。 多量に抜くと血圧低下などの危険性が増えるので私は1.5~2.5Lを抜くようにしています。 腹水が十分体外に抜けたら再度往診し針を抜いてバイタルサインのチェックや再度診察を行います。 患者さんの状態を診ながら週1~2回の頻度で腹水穿刺を行うようにしています。
腹水穿刺のデメリットは腹水中のアルブミンをはじめとするタンパク質などが喪失されるので栄養状態がさらに低下しさらに腹水が貯留しやすくなります。
在宅での腹水緩和はこのようにしています。
~補足~
腹水に対してCARTという治療法があります。
腹水ろ過濃縮再静注療法(Cell-Free And Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)の事です。
CARTは抜いた腹水を再利用して体内に戻します。腹水を抜いてがん細胞や最近などを取り除き、アルブミンなどの有用なタンパク成分を特殊な装置で回収して点滴で体内に戻します。

今回はここまでです。
実際に在宅で腹水穿刺している写真をのせます。