第30夜 癌の骨転移について

川口です。

桜が満開になっています!
私は毎朝、出勤前に腕立て伏せ、腹筋、背筋をしています。筋トレをしてから出勤すると不思議と日々の疲れをあまり感じないような気がします。

今回は癌の骨転移についてです。転移性骨腫瘍と呼ばれています。骨転移は進行癌の患者さんにおいて高頻度で認められます。原発性骨腫瘍(骨にある細胞が腫瘍化する)とは異なります。

Q:骨転移はどの癌で多いの?

肺癌、前立腺癌、乳癌、甲状腺癌などで多く認められますが他の部位の癌でも認められます。

Q:どこの骨に転移するの?

乳癌では胴体部の骨、頭蓋骨、手足の骨にも転移する事が多く、肺癌では骨盤、大腿骨、胸椎、腰椎などの中心部にある骨に転移する事が多いと言われています。つまり様々な部位に転移する恐れがあります。

Q:骨転移の症状は?

疼痛、骨折、神経障害、高カルシウム血症などです。
疼痛:癌の浸潤で骨が脆くなり微小骨折、腫瘍が骨の外に浸潤し骨膜上の痛覚神経を刺激・損傷、腫瘍による脊髄圧迫などが原因で生じます。
骨折:骨がもろくなり荷重に耐えられなくなると骨折に至る場合があります。
神経障害:特に背骨の周りには大事な神経が走っています。手、足が動かしづらい、麻痺につながることもあります。
高カルシウム血症:倦怠感、イライラ、眠気、食欲低下、便秘などが初期症状として挙げられます。程度が強くなると喉の渇き、吐き気、嘔吐、妄想、意識消失につながることがあります。
私も在宅で癌の患者さんを診ている際は血液検査でカルシウムの数値は定期的にチェックしています。

骨転移の治療は放射線治療、手術、薬物治療(抗がん剤、放射性医薬品を含む)などがあります。
在宅では消炎鎮痛剤、オピオイド、鎮痛補助薬など使用し疼痛緩和を行います。
安静時疼痛がある場合はオピオイド調整、食事などで体を動かす時に疼痛が出現する場合は食前に速効性オピオイド(レスキュー薬)を使用し対応します。

以前の勉強部屋で説明しましたが体動時の疼痛にあわせてオピオイドを増量すると過剰投与になるリスクがあり鎮痛補助薬を組み合わせる事があります。
鎮痛補助薬は抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不整脈薬、NMDA受容体拮抗薬、ステロイド、ビスホスホネート薬などを使用します。

在宅では内服薬以外にビスホスホネート薬のゾレドロン酸(ゾメタ)、デノスマブ製剤(ランマーク)などの注射製剤を使用する事があります。
ビスホスホネート、デノスマブに関しては以前、骨粗鬆症の会で説明しましたのでそちらも御参照くださいね。
高カルシウム血症にも効果が期待できます。

ゾメタは3~4週毎に15分以上かけて点滴投与します。
ランマークは4週間毎に皮下注射します。
☆顎骨壊死という副作用予防の為にも口腔ケアが大切です☆

私は定期的に口腔内の観察含め歯科に診察をお願いしています。
ランマークの副作用で低カルシウム血症があります。その際は必要に応じてカルシウム製剤、ビタミンD製剤を投与します。

今回はここまでです。

在宅でゾメタ+生理食塩水を点滴している写真と研究会からの帰り道に撮影した夜桜です。