第29夜 緩和医療について〜オピオイドについて⑤〜

川口です。

寒い日が続きますね。往診車から降りて患者さん宅まで歩く時の防寒対策でヒートテックが手放せないですね。

今回はメサドン(商品名はメサペイン)というオピオイドについてです。
現在、実際にメサペインを使用していますが他の強オピオイドと比較して癌による神経障害性疼痛に効果があると実感しています。

Q:メサペインて何?

モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどの強オピオイドに含まれる薬剤です。侵害受容性疼痛(臓器や組織に損傷や炎症が起きて生じる痛み)、癌が神経に広がっていく事で生じる神経障害性疼痛があります。オピオイド鎮痛薬は侵害受容性疼痛に強力な効果がありますが、神経障害性疼痛にはあまり効果が期待できません。メサペインは神経障害性疼痛にも効果が期待できます。
~要注意~
強オピオイドに分類されますがモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルで治療を行ったが効果が得られない場合に使用します。
過去の勉強部屋で説明したWHO除痛ラダーの第3段階のさらに上の第4段階として位置づけられます。
つまり他の強オピオイドからの切り替えになります!

Q:メサペインを使用する時の注意点は?

投与後少なくとも7日間は増量を行わないことです!
血中濃度が安定して完全な鎮痛効果が得られるまでには投与後少なくとも約7日間の日数が必要です。
メサペインの半減期は他のオピオイドと比較しても長く個人差が大きいです。
平均して30時間(短い人で7時間、長い人で65時間)となっています。
血中の半減期が長いため過剰投与にならないように慎重に増量する必要があります!
経口モルヒネ量60㎎/日未満のオピオイド鎮痛剤からの切り替えは推奨されていません。

Q:副作用は?

重大な副作用として不整脈(QT延長、心室頻拍など)、呼吸抑制などがあります。
その為、他の薬剤(副作用で上記不整脈があげられる)との併用には注意が必要です。
~他のオピオイドからの切り替えの目安~
モルヒネ経口60≦~≦160㎎/日・・・メサペイン15㎎/日(5㎎/回×3回)
モルヒネ経口160<~≦390㎎/日・・・メサペイン30㎎/日(10㎎/回×3回)
モルヒネ経口390<・・・メサペイン45㎎/日(15㎎/回×3回)
あくまで目安です!薬物動態に個人差があることより目安にしかなりません!
モルヒネ以外からの換算は以前に記載した箇所を参照してくださいね。
~切り替え方法~
強オピオイドからStop and Go、3日かけて1/3量ずつ変更する3-Day Switchがあります。
先行使用している強オピオイドが高容量の場合は3-Day Switchの方が安全かもしれません。
まだ使用可能となってからの期間が短く使用症例数も少ないので、あくまで安全かもしれないとしか言えません。

Q:レスキュー薬はどうするの?

メサペインはレスキュー薬として使用できません。切り替え前に使用していた強オピオイドの投与量、レスキュー量をもとに速放性オピオイド(オキノーム、オプソなど)を使用します。
強オピオイド(モルヒネ、オキシコドン)を使用していて1日量として例えばモルヒネなら60㎎を越して80㎎、100㎎と増量しても効果不十分かつ鎮痛補助薬(プレガバリンなど)を使用しても無効な場合、放射線治療などの非薬物治療も無効な場合はメサペイン導入を検討してもいいかもしれません。


~最後に~
メサペインはe-learningを受講した医師のみしか処方できません!

インフルエンザが流行しています。皆さん気をつけましょう!

今回の写真は癌の患者さんをお昼頃に診察で伺った際に頂いた手作りのお弁当です。