第17夜 中心静脈栄養について

川口です。
朝、夕は肌寒くなってきましたね。
前回は経鼻胃管を取り上げました。今回のテーマは中心静脈栄養についてです。
日々、訪問診療をしている時に御家族から質問される内容を元に説明します。

Q:中心静脈栄養って何?

心臓に近い太い血管から栄養剤を点滴投与します。高濃度の栄養輸液を投与する事でエネルギー、必要な栄養素を補給できます。
☆点滴の管(カテーテル)の先端部を上大静脈に留置します。上大静脈は心臓に近い血管で血液量も多く糖濃度の高い点滴が可能です。☆
高濃度の栄養輸液を投与

豆知識
静脈栄養法には末梢静脈栄養法と中心静脈栄養法があります。末梢静脈栄養法は腕などの血管から投与する栄養法です。概ね食事がとれない期間が7~10日程度であれば末梢静脈栄養が行われる事が多いです。それ以上の長期期間にわたる場合は中心静脈栄養法が選択されます。

Q:なんで末梢静脈からは高濃度の栄養点滴ができないの?

高カロリー点滴は末梢静脈から投与する点滴製剤に比べると糖濃度が3~6倍もあります。末梢静脈から投与すると血管痛、血管炎を起こし血管閉塞の危険性が多くなります。上大静脈は心臓から近く太い血管であり血流も多く、高濃度の点滴製剤を投与しても血流が多いので薄められて血管や血球への影響が少なくなります。

Q:中心静脈栄養はどんな時に行うの?

2週間以上腸管が使えない時(腸閉塞、手術後縫合不全、その他の重症腸疾患など)、経腸栄養が苦痛を伴う時、何らかの理由で経腸栄養の投与経路が確保できない時、患者さんが経腸栄養ではなく中心静脈栄養を希望した時などです。

Q:中心静脈栄養のメリットは?(経腸栄養と比較して)

消化管を休める事ができる、管による消化管への刺激や違和感が少ない、栄養補給時に下痢や腹痛などの腹部症状が少ないなどでしょう。

Q:デメリットは何?

消化管の自然な働きが妨げられる(前回取り上げました)、点滴の管は血管に留置されていますから血流感染の危険性、血栓症の危険性、ビタミン類が不足しやすい、肝機能障害の危険性、点滴の管を挿入する時のリスクが大きいなどです。

Q:点滴の管はどこから入れるの?

鎖骨下静脈(鎖骨の下にある血管、左右にあります)、内頚静脈(首にある血管)、大腿静脈(鼠径部と呼ばれる足の付け根を走っている血管です)などから挿入します。
☆腕の静脈から挿入するPICC(ピック)カテーテルについては別の機会に説明します☆
鎖骨下静脈から挿入する場合は気胸(肺に穴があいてしまう状況)の危険性があります。鼠径部にある大腿静脈から挿入する場合は感染の危険性があります。このように部位によってリスクが異なります。

今回はここまでにします。次回はPICC(ピック)カテーテルについて説明します。目黒のさんま祭りも終わっていよいよ秋ですね。
体調を崩さないようにしましょう。