秋の散歩道

 人には失われたものを求めるという、わがままな一面があると思う。日頃見慣れそばにある時には意識しないくせに、いざそれがなくなってみると、心の中で大きく美化され、懐かしく重要だったと考えるようになる。医学的にはもしかすると、記憶のシステムの問題に過ぎないのかもしれない。
 便利さにあこがれた私のような田舎者も、年齢とともにかつて身近だった自然の風景を思うようになり、薄暮に霞む子供時代の郷愁が、赤や黄色の秋の色に照らされていることに気付く。
 
職業柄あまり遠方に脚を延ばせない状況だが、そんな色を求めてクリニック近隣を彷徨ってみた。

 古木を求めるならやはり寺社なのだろう。手の付けられていない日本の原風景が偲ばれ、意外に満足感が高い。
 
デジタルにより作り出されたのではない、生命の色が感覚器に心地よい。無粋にも写真をたくさん撮ってしまった。
 
 色づく大銀杏、もみじ、ナナカマドの実、風の音、雲の色、湧き水に波打つ水面、お気に入りの秋の散歩道を見つけることは重要だ。

流八郎

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